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2015年を振り返る【読書編】 [本]

今年もあまり更新できなかった当ブログですが、年末ということで、今年を振り返ってみたいと思います。

で、まず今日は【読書編】。新企画(笑)です。

大学時代の友人のブログによると「年間百冊読書する会」というのがあり、とにかく百冊読めば会員を自称できるのだそうです。そこで、6月から読書記録を付けてみたところ、今年は比較的本を読んでいて、読了した本が7ヶ月で70冊でした。会員を自称できるか否か(5月末までに百冊になるか否か)はまだわかりませんが、折角なので、今年読んだ本の中で良かったと思うものを、メモしておきたいと思います。

なお、私はお金も無く、本の置き場所も無いので、基本的に読む本は文庫か新書、それも電子書籍になっているものが多いです。ですから話題になった『火花』も『教団X』もまだ読めておらず、「今さら?」という本が多いかもしれない(自分では判りませんが)ことを予めお断りしておきます。

まずは、好きな作家の作品の中で、ベスト、もしくはそれに近い作品に、今年出会えたと思えたのが次の2つです。どちらもそれぞれの持ち味がよく出ていると思います。
キャロリング

キャロリング

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2014/10/22
  • メディア: 単行本

夜の国のクーパー (創元推理文庫)

夜の国のクーパー (創元推理文庫)

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/03/19
  • メディア: 文庫


登場人物がすっかり気に入ったのが、次の2作品。まったくタイプの異なる二人ですが、肉子ちゃんと、リトル・アリョーヒンはどちらも愛すべきキャラクターだと思います。
漁港の肉子ちゃん (幻冬舎文庫)

漁港の肉子ちゃん (幻冬舎文庫)

  • 作者: 西 加奈子
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2014/04/10
  • メディア: 文庫

猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)

猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)

  • 作者: 小川 洋子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/07/08
  • メディア: 文庫


上手いなと思ったのが次の2作品。前者は叙述トリックに見事引っかかり、二度読みしました。後者は描写が上手く、上海は良く知りませんが、北京と台湾については、街や人の感じがよく出ているように思います。タイトルもいいですね。確か、後者は北京研修でご一緒した、ある先生が紹介してくださった本だったと思います。
太陽の坐る場所 (文春文庫)

太陽の坐る場所 (文春文庫)

  • 作者: 辻村 深月
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/06/10
  • メディア: 文庫

のろのろ歩け (文春文庫)

のろのろ歩け (文春文庫)

  • 作者: 中島 京子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/03/10
  • メディア: 文庫


論説部門ではこれでしょうか。タイトルに偽りなしの「超明解」。「大江健三郎や中上健次って、なんであんなに評価が高いの?」と疑問に思う人は是非。
書く前に読もう超明解文学史―ワセダ大学小説教室 (集英社文庫)

書く前に読もう超明解文学史―ワセダ大学小説教室 (集英社文庫)

  • 作者: 三田 誠広
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2000/06
  • メディア: 文庫


コミック部門では、以前挙げたもの『聲の形』『四月は君の嘘』 )も勿論良いのですが、それらは私の中では去年読んだ本というイメージなので、今年だとこれかな。
キングダム コミック 1-40巻セット (ヤングジャンプコミックス)

キングダム コミック 1-40巻セット (ヤングジャンプコミックス)

  • 作者: 原 泰久
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2015/10/19
  • メディア: コミック

やっぱりコミックには「読み始めたら止まらない」感が欲しいんですよね。これは共同研究をしているある先生にご紹介いただいて、試しに読んでみたら、一気に既刊分を全て読んでしまったという、まさに読み始めたら止まらない作品。

他にも色々面白いものが有ったように思いますが、ひとまずここまで。


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最近読んだ本 [本]

有川浩の 『 キャロリング 』 を読みました。面白かった! 私の中の有川浩作品ランキング ( 5、6冊しか読んでいませんが ) では、これまでベストだった 『 県庁おもてなし課 』 を越えたのではないかと。シラフの時にもう一度読んでみたいです。
キャロリング

キャロリング

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2014/10/22
  • メディア: 単行本


実は最近 「 当たり 」 が多いような気がします。先日読んだピエール ルメートル 『 その女アレックス 』 にも驚かされましたし、映画 『 KANO 』 も、完成度という点では...でしたが、かなり泣けました。
その女アレックス (文春文庫)

その女アレックス (文春文庫)

  • 作者: ピエール ルメートル
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2014/09/02
  • メディア: 文庫


漫画でも、大今良時 『 聲の形 』 とか新川直司 『 四月は君の嘘 』 等は、最近ようやく読んだのですが、どちらも良かったです。
聲の形 コミック 全7巻完結セット (週刊少年マガジンKC)

聲の形 コミック 全7巻完結セット (週刊少年マガジンKC)

  • 作者: 大今良時
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/12/17
  • メディア: コミック
四月は君の嘘 コミック 1-10巻セット (月刊マガジンコミックス)

四月は君の嘘 コミック 1-10巻セット (月刊マガジンコミックス)

  • 作者: 新川 直司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/10/17
  • メディア: コミック


もしかすると、年をとってきて涙腺とかいろんなところが緩んだせいで、以前より評価が甘くなってきているのかもしれませんが、それはそれで幸せ。

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生活禅のすすめ [本]

このたび山喜房佛書林というところから『生活禅のすすめ』(定価4000円+税)という本が出ました。私、この本の翻訳を一部担当しております。

この本は、中国の仏教界で指導的な立場にある浄慧法師の著書『生活禅鑰』(学術書ではなく、一般向けに書かれたものです)を日本語に翻訳したもので、全20章のうち、私は第2~8章を担当しました。(目次は以下の通り)

seikatsuzen.jpg  序  末木文美士
  解説 何燕生
  自序
  第1章 禅とは何か
  第2章 達摩禅ー理入と行入ー
  第3章 四祖禅ー見地、功夫と方法ー
  第4章 六祖禅ー無念、無相、無住ー
  第5章 六祖が示した修と証
  第6章 『壇経』中の幾つかの問題
  第7章 臨済禅ー一切の知見を取り除くー
  第8章 臨済禅師の法語
  第9章 趙州禅ー平常心、本分事ー
  第10章 禅の「無門関」
  第11章 生活禅の大要
  第12章 生活禅の4つの根本
  第13章 『心経』と生活禅
  第14章 私たちの心をしっかりと管理する
  第15章 牛をなつけるように心を育てるー『十牛図頌』略説ー
  第16章 信仰、因果、良心、道徳
  第17章 感恩、寛容、共有、結縁
  第18章 生活の中の修行、修行の中の生活
  第19章 煩悩を処分する方法
  第20章 生活と生死

さて、ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、私の専門分野は仏教ではありません(『西遊記』は、一応取経の話ですが(笑))。そのため私の担当部分は、一旦訳し終えたあと、恥ずかしながら、仏教や中国思想を良くご存じの、ある先生にかなり手を入れていただいて、なんとかできあがった次第です(その分、訳文の信頼度は上がっていると思います(苦))。他の章を担当された先生方は、皆さん専門に近い分野の方々なので、しっかりとした訳になっているものと思われます。

興味のある方は、以下のサイトでご注文いただくか、出版社にご注文いただくか、井上までご連絡ください。

Amazon
生活禅のすすめ

紀伊國屋書店
http://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784796305716

セブンネット
http://www.7netshopping.jp/books/detail/-/accd/1106285868/subno/1

出版社のURLは以下のとおりです。

http://www003.upp.so-net.ne.jp/sankibo/

何卒、よろしくお願いいたします。


井上とお知り合いの方に関しては、私の方へご連絡いただいても、もちろんOKです。
よろしくお願いいたします。

(2014年9月4日編集)
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不意打ち(『おとうさんはウルトラマン』) [本]

次男(三歳)と出かけた妻が、帰宅後、お出かけ先で次男が気に入った絵本があったので購入して欲しいといいました。それが、この本。
おとうさんはウルトラマン

おとうさんはウルトラマン

  • 作者: みやにし たつや
  • 出版社/メーカー: 学習研究社
  • 発売日: 1996/05
  • メディア: 大型本

まあ、ヒーロー好きの次男がウルトラマンの絵本を気に入っても何の不思議もないので、疑うこと無く購入。早速読み聞かせてみると、なんとこれ、「子どもを喜ばせる本」というよりは、「父親を泣かせる本」でした。

いや、こういう不意打ち勘弁してほしいです。特に父子ものとか。
最近すっかり涙腺がゆるくなっているのに...。

次男は、ここに書かれた父親の気持ちがわかっているのか、いないのか、とにかく気に入ってはいるようなので、妻に騙されたという訳ではないようですが...。

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三国志演義の世界 [本]

三国志演義の世界 (東方選書)

三国志演義の世界 (東方選書)

  • 作者: 金 文京
  • 出版社/メーカー: 東方書店
  • 発売日: 2010/05
  • メディア: 単行本
唐宋伝奇の講義を終えたら、いよいよ白話小説。まずは『三国志演義』です。

『三国志演義』を概説した必読書といえば、金文京『三国志演義の世界』(東方書店)ですが、この本、今年五月に増補版がでています。

1993年に出た初版との違いについて、金先生は「再版あとがき」で、
再版では、この十七年間における研究の進展をできるだけ反映させるとともに、韓国語版で増補した日本と韓国における『演義』受容の状況を、第九章としてあらたに書きたした。ただし韓国語版を全面的に改稿したもので、内容は同じでない。
と、書かれています。ちなみに、第九章タイトルは「東アジアの『三国志演義』」で「朝鮮半島の『三国志演義』」「日本の『三国志演義』」「『三国志演義』主要テキスト一覧」の三項から成り立っています。

また、目次を見ると、第七章「『三国志演義』の出版戦争」に「『三国志演義』と受験参考書」という項目があり、これも書き足された部分だと思われます。

試みに、第二章「『三国志』と『三国志演義』…歴史と小説」(p.16-52)に、ざっと目をとおしてみますと、5,6箇所ほど初版と異なる箇所が見つかりました。例えば初版で、
『演義』の現存するもっとも古いテキストである明代の嘉靖本『三国志通俗演義』では、…(p.25)
と、なっている箇所が、増補版では、
『演義』の現存するもっとも古いテキストである明代の嘉靖元年序刊の『三国志通俗演義』(従来、この本は嘉靖本とよばれてきたが、本書では同じく嘉靖年間刊行の葉逢春本と区別するため、以後、序文作者の名をとって張尚徳本とよぶことにする)では、…(p.21)
となっていますが、これなどは「あとがき」でいう「研究の進展を反映」させた箇所でしょう。

他には初版で、
それは『魏書』という書物に見える話で、そこでは呂伯奢の家族が曹操をおどして、馬と荷物をとったので、曹操はやむなく彼らを殺したということになっているのである。先の話とはまるであべこべであろう。 / 『三国志』の注は両説を並記するだけで、どちらが正しいとも言っていない。しいて言えば、先にあげた『魏書』の方に重きがあるであろうか。しかし『演義』は後者の話の方をとった。その理由は説明するまでもないであろう。(p.41)
と、なっている箇所を増補版では、
それは王沈の『魏書』に見える話で、そこでは呂伯奢の家族が曹操をおどして、馬と荷物をとったので、曹操はやむなく彼らを殺したということになっているのである。先の話とはまるであべこべであろう。『三国志』の注は両説を並記するだけで、どちらが正しいとも言っていない。しかし王沈の『魏書』は、曹操や魏に都合のよい記述が目立つ書物であり、『演義』がこれを採らなかったのは当然であろう。(p.37)
と、するように、初版と説明を変えたり、丁寧にした箇所がいくつかありました。

本文の活字も少し大きくなっており、全体的に読みやすくなった印象です。

なお、貫華庵>ネット目録>三国志演義>関連書籍の項にも、この「増補版」を入れておきました。

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漢文法基礎 [本]

漢文法基礎  本当にわかる漢文入門 (講談社学術文庫)

漢文法基礎  本当にわかる漢文入門 (講談社学術文庫)

  • 作者: 二畳庵主人
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/10/13
  • メディア: 文庫

今から二十数年前の高校時代、部活が忙しくて、塾などに通っていなかった私は、Z会の通信添削で受験勉強をしていました。受験勉強をしていたといっても、添削教材をやらずにどんどんため込んでしまうような不真面目な会員だったのですが、教材自体はとても気に入っており、参考書もZ会のものを使っていました。

その中でも特に記憶に残っている参考書が、二畳庵主人『漢文法基礎』です。説明が詳細かつ的確なだけではなく、文章も面白くて、参考書というよりも愛読書という感じでした。中国文学専攻に進んだこともあり、受験が終わっても大学時代の下宿には持っていったような気がするのですが、いつのまにかどこかへ行ってしまい、非常に残念に思っていました。それが今回講談社の学術文庫で出版されるときき、早速購入してみてびっくり。二畳庵先生って加地伸行先生だったのですね。もしかして有名な話?

久しぶりに読んでみると、やはり懐かしい。本文前の山村暮鳥《ある時》にはじまり、和文脈と漢文脈(p.21)、出題率による入試問題予想に対する批判(p.24)、「レ」は「れ点」ではなく「かりがね点」(p.66)、連文・互文(p.142)……そうそう、憶えていますよ。

一方で、記憶に無かった箇所もやはり結構あります。例えば、「若……然」の説明。
 ところで「若……然」というタイプがある。例えば、
  若視其肺肝然
という文。(中略)「其の肺肝を視るがごとくしかり」と読むことになる。「その肺肝を視るのしかるがごとし」と読んではいけない。(中略)興味深いことに、現代中国語にもそれが投影されている。(中略)例えば、
  好像飛機一様(「飛機」は「飛行機」のこと)
は、「好(あたか)も飛機に像(かたど)りて一様なり」或いは「好(よ)く飛機に像りて一様なり」「飛機に像ることを好くして一様なり」とでも訓読できるタイプで、「若飛機然」(飛機のごとくしかり)と同じようなものである。(p.188-190)

新たに加えられた箇所なのか、当時は中国語がわからなかったので、あまり解りやすくなかったのか、今読むと非常にわかりやすい説明だと思うのですが、記憶にありませんでした。

研究対象を明清白話小説にしてからは、資料をほとんど中国語読みするので、漢文訓読の機会は少なくなっておりますが、これを機に、懐かしがりながら復習してみたいと思います。

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ebook版『水滸伝』(李志清・夏秋のぞみ) [本]

李志清・夏秋のぞみのコミック『水滸伝』がeBookJapanででたようです。

・ eBookJapan 『水滸伝』 全16巻 [立ち読み版アリ!]

一冊¥315で、「安っ!」と思ったら、ebook2冊で文庫版一冊分の内容でしたか。
だったら同じぐらいですね。

↓MF文庫版

水滸伝 (1) (MF文庫)

水滸伝 (1) (MF文庫)

  • 作者: 李 志清
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2004/12
  • メディア: 文庫


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罠 (伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』) [本]

日曜日に八木山動物公園へ。
 ↓
映画「アヒルと鴨のコインロッカー」(伊坂幸太郎原作)面白かったなあ。
 ↓
そういや「ゴールデンスランバー」も最近DVDになったんだっけ?
 ↓
まあ、原作小説の方を読むことにしようか。

と、いうような流れで、伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』を軽い気持ちで読み始めたら、“罠”にはまってしまいました。どこで読むのを中断したらいいかわからない。

とはいえ、次男がまとわりついてきたら相手をしてやり、外出する用事は一応こなしたので、それらの時は中断したのですが、仕事をするための(?)貴重な“家での一人の時間”はすっかり奪われるハメに。

で、ようやく読み終わりましたが、これ、最後まで読んで全貌がわかってからもう一度読むと、また面白そうなんですよね。うーむ、どうしたものか。

ゴールデンスランバー

ゴールデンスランバー

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/11/29
  • メディア: ハードカバー


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西太后―大清帝国最後の光芒 [本]


西太后―大清帝国最後の光芒 (中公新書)

西太后―大清帝国最後の光芒 (中公新書)

  • 作者: 加藤 徹
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2005/09
  • メディア: 新書

実家で子守をしながら、その合間に読んでいたのがこれ。
レポートで光緒帝をとりあげた学生さんがいたのと、NHKの「蒼穹の昴」を見ていて実際の人物像に興味が湧いたので読んでみました。

結果から言うと面白かったです。
この時代については専門ではないので、内容の当否についてはあまり自信をもって断言できないのですが、腑に落ちる説明が多かったように思います。

例えば、西太后が贅沢をしたことはよく知られていますが、これについてp.200「甘い汁の循環」ではこのように書かれています。
皇帝が、大婚や大寿などの国家的祝賀行事や、宮殿の造営など土木産業を興すたびに、大臣、官僚、下級役人、業者、現場監督、労働者などが、順番に「おこぼれ」の分配にあずかる。この甘い汁の循環を絶やさぬかぎり、その王朝の命脈は保たれるのであった。 / 西太后の贅沢は、彼女一個人の私利私欲というだけではなかった。悪くいえば国を挙げての「たかりの構造」、よくいえば「所得の再分配」という意味合いもあったのである(中略)清朝の延命という見地から見れば、それなりに有効な政策だったのである。

私にとっては、彼女はただの贅沢好きで贅沢をしていたという説明よりも(まあ、そういう面もあったでしょうが)、納得できるような気がしました。

それから各項目で俗説も紹介し(「イエホナラの呪い」とか「南方出生説」とか)、反証を挙げている点もよかったです。

ただし、これ、5年前の本なのですが、「西太后は、今がちょうど旬である」(p.5)と作者もいうとおり、今、研究がさかんにおこなわれていて、定説が変わっていくかもしれない点は考慮して読んだ方がいいかもしれません。

例えば、光緒帝の死因については「暗殺ではなく自然死だった、というのが現在の定説となっている」(p.265)とありますが、その後、いろいろと調査がされていて、定説が覆るかもしれない状況のようです。

以下、レコードチャイナ
最新科学で100年の謎を解明!清朝11代皇帝光緒帝の死因はヒ素による毒殺か?―香港誌
犯人は西太后か?光緒帝の突然死、ヒ素中毒と確定―中国
<続報>光緒帝のヒ素中毒死断定、歴史教科書には記載せず―中国

まあ、政治が絡むと「科学的調査」もあてにならなくなることがあるので(毒ギョーザの時も、「実験結果」から中国国内での毒物混入の可能性は少ないと発表したんじゃなかったでしたっけ?)、定説が覆らない可能性もありますけどね。

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中国の五大小説 上 [本]

中国の五大小説〈上〉三国志演義・西遊記 (岩波新書)

中国の五大小説〈上〉三国志演義・西遊記 (岩波新書)

  • 作者: 井波 律子
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2008/04
  • メディア: 新書

井波律子先生の『 中国の五大小説 上 』(岩波新書、2008.04)を読みました。

これは、その名のとおり、井波先生による中国の五大小説(四大奇書+紅楼夢)のガイド。
上巻は 『 三国志演義 』 と 『 西遊記 』 を扱っています(ネット目録では、両書の関連書籍の項に入れてあります)。

カバーの見返し部分の宣伝文句に、
一度は通して読んでみたかったあの物語を、練達の案内人と共に楽しむ。
とあるように、『三国志演義』や『西遊記』のストーリーを概説しつつ、ガイドしていく形式になっています。なので、それぞれの作品について熟知している人よりも、まだ読んでいない人や、以前読んだけど細かいところは忘れた、という人に向いているかもしれません。

ガイドの性格はどのようなものかといいますと、ストーリーや場面に関連する知識を述べる部分もあるのですが、それ以上に、作品のどこに面白さがあるのかを述べることに力点が置かれているように思います。例えば、 『 西遊記 』 は 「 一話完結、繰り返し(p.176)」で物語が構成されています。これは見方によっては単調な構成と見ることもできそうですが、著者はこれを面白さの原因と見ます。
こうしたパターンの繰り返しによって話をすすめていくというのは、読み手を楽しませるための、語りの基本的なテクニックです。たとえば、日本の昔話「わらしべ長者」は、ワラを一本もって歩く一人の男が道の途中で誰かに会い、持ち物を交換してもらうというパターンの繰り返しでできています。これが予定調和の物語だからこそ、読み手は最終的には安堵感を抱きながらも、「次はどんな人に会うのか」「次は何をもらえるのか」「いったい最後はどうなるのだろう」と、ワクワクとその展開を楽しめるのです。『西遊記』の語りの面白さもまさにこういうところにあります。(p.177)
このように作品の「面白さ」がどこにあるのかを指摘しながら、ストーリーや名場面を紹介していくというのが本書の基本的姿勢だと思われます。

なお、最後の部分に、中国小説全体の特徴について述べた箇所があります。
具体的には
・ 登場人物の性格が成長しない
・ 登場人物の関係性を描くことが重視されている
・ 登場人物の内面はあまり描かれず、外在的要素(役割・行動形態・
  容姿・得意技など)を中心とした描写がされる
というような点が指摘されており、内容的にはこれまでにも言われていたことではあるのですが、解りやすく、手際よく説明されている点はさすがだと感じました。


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